23/08/2026
私が富山県南砺(なんと)市に移住した理由は、
田舎暮らしへの憧れではありませんでした。
むしろ、
引っ越す予定なんて
まったくありませんでした。
当時住んでいたアパートに
引っ越して、まだ2年目。
借金はあっても、
蓄えはほとんどありませんでした。
そんな私が、
「ここに引っ越してこよう」
と決めたのは、
富山市へ向かう高速道路から見た
ひとつの景色がきっかけでした。
田んぼの中に、
大きな古い屋敷が
ぽつん、ぽつんと建っている。
まるで、
金田一耕助が走っていそうな景色。
そして何より
目を奪われたのが、
神社なのか、
家なのかわからないような、
「かいにょ」と呼ばれる
屋敷林に囲まれた家でした。
ああ、
こんな家で暮らしたかったんだ。
その瞬間、
そう思ったんです。
なぜ、そんなにも
惹かれたのか。
あとになって考えると、
そこには「懐かしさ」がありました。
私が子どもの頃にいた、
伊勢の神宮の内宮。
宇治橋のすぐそばで
お店を営んでいた
養父母の伯母夫婦に預けられ、
私はそこで
子ども時代の一時期を過ごしました。
私にとって内宮は、
「神宮」でも
「お伊勢さん」でもなく、
「いらっしゃい」
と呼んでいた場所。
宇治橋を渡って
参道を左に入ると池があって、
そこにいる鯉に
牛乳パンをあげるために
よく出かけていました。
私は子どもの頃から
引っ越し続きで、
「地元」と言える場所が
ありませんでした。
そんな私にとって、
内宮は
実家のような存在だったんです。
だからなのかもしれません。
神社のように
木々に見守られた暮らしが、
ここにある。
富山で見た景色の中に、
遠い昔、
自分が感じていた空気のようなものを
見つけたのかもしれません。
そして家に帰って、
一番最初に当時の夫に言いました。
「私、富山県�