28/05/2026
DJI FlightHub 2 最新アップデート内容について
近年、産業用ドローン運用において「機体性能」だけでなく、複数機体の統合管理・遠隔運用・自動化されたデータ解析基盤の重要性が急速に高まっています。その中核を担うクラウドプラットフォームが、DJI FlightHub 2 です。
2026年3月および4月に実施された大型アップデートでは、AIによる飛行支援機能や画像認識能力の強化、データ管理性の向上など、実運用に直結する機能改善が多数追加されました。
◆DJI FlightHub 2 とは
DJI FlightHub 2 は、DJI 製産業用ドローン(Matrice シリーズなど)向けのクラウド型統合運用プラットフォームです。遠隔離着陸、飛行ルート管理、ライブ映像共有、クラウド 3D モデリング、点検データ管理などを一元化し、「現地に常駐しないドローン運用」を実現します。
特に DJI Dock 3 との組み合わせでは自動巡回点検・定期監視との親和性が高く、インフラ点検・防災・警備・測量分野での導入が進んでいます。
◆主要アップデート内容
1. AI搭載ドローン制御アシスタント
今回のアップデートで特に注目される機能です。FlightHub 2 の画面上に新設されたチャット欄から、テキストまたは音声で指示を入力するだけで、AI がドローンの飛行制御を自動実行します。
実際の検証では、以下のような操作が確認されています。
・Dock に機体を格納した状態から「ポイントCまで飛行してください」と指示 → 自動起動・離陸・指定ポイントへの飛行・ホバリングを一連で実行
・手動飛行中に「30m前進してください」と指示 → 指示通りに移動
・手動飛行中に「トラクターが映り込んでいた場合は3倍ズームで撮影してください」と指示 → 条件を検知後に撮影を実行
・自動飛行中に「桜が映り込んだ場合には撮影を停止してください」と指示 → 画像認識により検出後、停止
従来の業務用ドローン運用では、飛行計画作成や操縦設定に一定の専門知識が必要でした。AI による自然言語操作が実用段階に入りつつあることで、オペレーション負荷の低減や省人化が現実的なものになり始めています。
一方で、現時点では応答に若干の遅延が生じる場合があり、自動飛行ルートの起動・再開指示や速度・旋回角度などの細かい制御には未対応です。現段階では「操縦者を置き換える技術」というより、「運用補助・半自動化技術」と捉えるのが実態に近いでしょう。
2. マルチモーダルAI認識
FlightHub 2 には従来から「人・車・船・動く熱源体」の 4 種類の AI 認識機能が搭載されていましたが、今回新たに「マルチモーダル認識」への対応が追加されました。
従来のAI認識との本質的な違い
従来の4種類(人・車・船・動く熱源体)は、膨大なデータを事前学習させた「固定カテゴリ」の認識です。対象があらかじめ決まっており、その枠外は検出できません。マルチモーダル認識は、対象をユーザーがその場で自由に定義できる点が本質的な違いです。
2種類の指定方法の使い分け
対象の指定方法は2種類あります。「画像指定」は写真を見本として読み込ませる方法で、対象の外観が明確な場合に有効です。「テキスト指定」は「黄色い安全ベストを着た人」「屋根に積もった雪」のように言葉で条件を記述する方法で、画像が用意できない場合や条件が複合的な場合に向いています。
今回のアップデートにより、設定したルートを自動飛行しながら、同時にマルチモーダル認識による対象の検出・自動撮影を実行できるようになりました。検出時は自動でシャッターが切られ、メディアファイルに記録されます。
「定期巡回しながら異常対象のみを自動撮影する」といった高度な点検フローの構築も可能になり、これは単なる画像認識強化ではなく「点検の自動判断」へ近づくアップデートです。特に設備点検・警備用途では、運用効率への影響が大きい機能と考えられます。
精度・速度に関する注意点
専用モデルより精度・速度が劣る理由は、専用モデルが特定対象に特化して最適化されているのに対し、マルチモーダルはその場で汎用的に処理するためです。精度を重視する用途(人の検知など)は専用モデル、絞り込み条件が複雑な用途はマルチモーダル、という使い分けが現実的です。
設定は、プロジェクト内の「タスク計画ライブラリ」→「計画を作成」から、新設された「マルチモーダル検出(On/Off)」ボタンで有効化できます。
3. 高解像度パノラマ
従来の広角(1倍)カメラによるパノラマに加え、3倍ズームカメラを使用した高解像度パノラマの生成が可能になりました。より細部まで鮮明な現場記録が求められる用途での活用が期待されます。
撮影枚数および飛行時間が増加する点には注意が必要です。
4. Change Detection Pro(ベータ版)
AI による差分検出機能が大きく進化しました。従来は 2D オルソ画像のみ対応でしたが、同一ウェイポイントで撮影した複数の画像を対象とした比較が可能になり、タイムライン形式で異なる日時のデータを並べながら AI が差分を自動抽出します。
活用シーンとしては、工事進捗の比較、資材配置の変化確認、車両の有無、災害前後の状況把握などが挙げられます。
ドローン活用において本質的な価値を生むのは「飛ばすこと」ではなく、取得データを継続比較して変化を検知することです。この更新は、FlightHub 2 が「飛行管理ソフト」から「運用分析プラットフォーム」へ進化していることを示しています。
5. データ管理機能の強化
リソースライブラリへの統合
従来は写真・モデル・設計ファイルがそれぞれ独立したライブラリで管理されていましたが、「リソースライブラリ」として一元化されました。データ管理の効率が向上し、運用フローの簡素化が図られています。
ゴミ箱機能の追加
画像・動画・3D モデルなどを管理するリソースライブラリに、ゴミ箱機能が実装されました。これまで削除操作は即時に反映され復元が不可能でしたが、今後は削除後 30 日間はゴミ箱に保持されるため、誤操作によるデータ消失のリスクを大幅に低減できます。
6. コンシューマー向けドローン・ハンドヘルド機器のRTMP配信対応
DJI コンシューマー向けドローンおよびハンドヘルド機器から、FlightHub 2 への接続と RTMP を介したライブ配信・表示が可能になりました。
「プロジェクト」→「チーム」ページの機器ウィンドウ、およびマルチストリームライブビュー画面にて、配信機器からのライブ映像をリアルタイムで確認できます。また、配信を介して接続された機器については、プロジェクト設定で自動録画を有効にすることで、ライブ映像をタイムリーに録画することも可能です。
これにより、産業用機体に限らず、コンシューマー機やハンドヘルド機器も含めた統合的な映像管理の運用が広がります。
7. その他の改善点
・FlightHub Sync がベータ版から正式版へ移行
・DJI Dock 3 に機器損傷評価機能を追加(異常発生時の状態確認・原因特定を迅速化)
◆まとめ
今回の一連のアップデートにより、DJI FlightHub 2 は単なる遠隔操縦システムではなく、AI による飛行支援・自動検知・差分解析・クラウドデータ統合・自律運用支援までを包含する総合運用基盤へと進化しています。
特に点検・防災・警備・測量分野では、「人が映像を見る運用」から「AI が変化を抽出し、人が判断する運用」への転換が始まっています。
一方で、AI による判断精度・運用設計・通信環境・セキュリティ要件など、導入側に求められる知識水準も高まっています。今後は「機体を飛ばせる企業」より、「運用全体を設計できる企業」の優位性が強くなるでしょう。
DJI 産業用ドローンおよび FlightHub 2 の導入・活用に関するご相談は、弊社までお問い合わせください。
※動画は昨年10月に実施したDock 3セミナーから、湖西市役所とアクトタワーを捉えたズームを含めたウェイポイント飛行の様子です。